ごった日記

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中尉/古処誠二

変換 ~ 102

敗戦間近の太平洋戦争ビルマ戦線、ペストの囲い込みのため派遣された軍医の伊与田中尉が誘拐される。
護衛の尾能軍曹の一人称で、伊与田中尉との初対面から終戦、帰国までが語られる。

まるで覇気が感じられず貫禄もない、およそ軍人らしくない伊与田中尉にいい感情を持ち得ない尾能軍曹が、
ペストの囲い込み任務と護衛を通じ、メダメンサ部落のビルマ人との関わっていく事によって中尉や村のビルマ人らと
打ち解けていく…かと言うとそこまででもなく、多少態度を軟化させる、というくらいか。
正直、中盤まではいつもの古処誠二らしい臨場感とリアリティに満ち、
それでいて淡々と文章を書き連ね戦争小説として巧みであっても、
内藤そのものはつまらなくはないといった程度。
面白くなってきたのは、終戦し同時にペストが終息、伊与田中尉が誘拐され
尾能らビルマの日本軍が収容所送りになった中盤以降。
前半における伊与田中尉の言動や人間性自体が伏線となっていて、
それらが収束していく様はお見事という他ない

かつては軍務に誠実だったのが、マラリアの「シニ温度」によって死の淵をさまよい、
その後遺症から怠惰になってしまった中尉。
尾能が伊与田中尉への見方を変えたその事実が、この作品の根幹を成すモノだと言う構成は上手すぎる
このあたりは、ミステリーでデビューした作者の力量が生きた形になったといった所か。

登場人物の誰かに特に感情移入することはなく、
「真相」もあくまで尾能や衛生兵長の「推測」でしかなかったけど、
それでもその「推測」から察せられる中尉の心情にはやるせない気持ちになり、
同時に中尉とビルマ人たちの親密さのストーリーへの活かし方に感心しましたねえ。
中尉を知っていくにつれ、軽蔑していたはずの中尉に幻滅したくないと心情を変化させていく
尾能も良かった
よ。

と言うわけで、今回も外れることのない古処戦争小説でございました。

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