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2017-09

AI(アイ)に負けた夏/土橋真二郎 - 2017.08.28 Mon

変換 ~ 101

高度なAIを有し、外見もほとんど人間と変わらないアンドロイドが存在する世界。
恋愛成功率100%の恋愛シミュレーションのバグで運命の相手の情報が失われたと
女性アンドロイドのライズに聞かされた秋山明は、ライズがトレースした女性の記憶を取り戻すため、
ライズとデートを重ねていくことになる。

面白かったけど、私でも先が読める展開なのはどうなのよと思わんでもない
とは言うものの、デートをすることで「彼女」の記憶を取り戻し行方を探し「赤い糸」を結ぶ、と言うストーリーラインは、
男女の掛け合いが巧みな作者ならではの面白さがあるね。
そこに、「彼女」の人格で秋山とデートするライズとライズ本人の人格が絡み合うことで、
真相に近づいていく、と同時にその関係性が縺れていく流れがいい。
何より、2つの人格を使い分けるライズの心情に萌えずにはいられない
「彼は私のボディを丁寧に優しく、心を乱暴で雑に扱い続けた」と言う、終盤の独白が素晴らしい。
「彼女」の方は、ライズが魅力的すぎたため、どうでもよかったりした
ストーリー的には重要なんだけどね…。
秋山は良くも悪くも普通な感じ。
いつもの土橋作品の主人公と比べても、セクハラ度もロジカルさも弱かったのが残念
不満点もないけどね。
出番は少ないものの、姪っ子の有沙も可愛かったね。
年齢に似合わず知的で冷静、母親譲りの保護者気取り、一方で年齢相応の無邪気さや生意気さがあったりと、
ライズに負けず劣らず魅力的でしたわ。
秋山との最初と最後の距離感の変化も、リアルっぽくて好き。

上でストーリー展開は読めた、とは言ったものの、序盤のライズのセリフが伏線だった事と、
爽やかなラストは良かったよ。
土橋真二郎のMW文庫作品の中では、初めてのハッピーエンドかな?

「で、でも、話を聞いてると、急いで恋人にしようとしすぎというか。
恋愛はもっとゆっくりと育むのが自然というか…」
「速度ですか?速いからといって価値が下がることはありません。
ウサイン・ボルトがベルリンで打ち立てた9・52秒は世界の人間を感動させ、
今でもはっきりと私の目に焼き付いています」
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探偵さえいなければ/東川篤哉 - 2017.08.27 Sun

変換 ~ 098

烏賊川市シリーズの新作ということで、久しぶりに東川篤哉作品購入。

…あれ?つまんねーぞ

この作者の、人によっては寒いとしか思えない数々のギャグとユルいノリとアホなキャラクターに、
本格志向な謎解きが好きだったのが、ブレイク以後いつの間にかいずれにも面白さを感じなくなって読まなくなったんですが、
最後の砦としてこの烏賊川市シリーズに希望を抱いていた結果がこれ。おお、もう…。
お馴染みのキャラクターなのでなんとか読めたけど、5編の短編集のせいかレギュラー勢揃いの話がなく
その点にも不満が残る。

「倉持和哉の二つのアリバイ」
倒叙式で、犯人は鵜飼をアリバイの証人に仕立てようとするが…。
壊れた腕時計とはまたなんとも古臭い。
まあこの場合は、犯人の意図とは違った形での「壊れた腕時計」だったので、
古臭いと批判するのはフェアじゃないかもしれんけど。
「ゆるキャラはなぜ殺される」
吉岡酒店の沙耶香ちゃん…じゃなくて剣崎マイカちゃん探偵回。
コレ間違いなく前作の方がギャグも内容も面白かった
これ自体が出来が悪いわけじゃないけど、日本推理作家協会賞にノミネートと言われると疑問。
「博士とロボットの不在証明」
これはちょっとバカミスにも程がありませんかねえ…。
朱美さんが探偵役として快刀乱麻に切って取る、というのも何か違和感あったな。
犯人視点だから、朱美さんがめっちゃ切れ者に見えるしw
「とある密室の始まりと終わり」
…どう評価すればいいのやら。
グロいのをギャグにするのはらしいといえばらしい。
「被害者によく似た男」
よく似た男をアリバイに利用したトリック。
特徴までそっくりにしたつもりが実は…と言うのは面白かったけどどこかで見たような。
その特徴なんかはいかにもこの作者らしいバカバカしさ。

無理やり笑わせようとしてるかのように、ギャグが薄ら寒くなってるのがホントキツい。
昔からだろ!と言われると否定しづらいのも事実ではあるけど、
それでも昔はここまで寒くは感じなかったのよね。
短編だと、キャラの掛け合いも上手く機能してないことが多い上、
犯人視点の回だと鵜飼らレギュラー勢の影が薄くなるのも問題。

そんなわけで、残念ながら烏賊川市シリーズもハズレでございました…。
次なる砦は仕掛島かな?

どうでもいいけど、本ミスクラブの会長になってて笑った
全然イメージわかないw

中尉/古処誠二 - 2017.08.24 Thu

変換 ~ 102

敗戦間近の太平洋戦争ビルマ戦線、ペストの囲い込みのため派遣された軍医の伊与田中尉が誘拐される。
護衛の尾能軍曹の一人称で、伊与田中尉との初対面から終戦、帰国までが語られる。

まるで覇気が感じられず貫禄もない、およそ軍人らしくない伊与田中尉にいい感情を持ち得ない尾能軍曹が、
ペストの囲い込み任務と護衛を通じ、メダメンサ部落のビルマ人との関わっていく事によって中尉や村のビルマ人らと
打ち解けていく…かと言うとそこまででもなく、多少態度を軟化させる、というくらいか。
正直、中盤まではいつもの古処誠二らしい臨場感とリアリティに満ち、
それでいて淡々と文章を書き連ね戦争小説として巧みであっても、
内藤そのものはつまらなくはないといった程度。
面白くなってきたのは、終戦し同時にペストが終息、伊与田中尉が誘拐され
尾能らビルマの日本軍が収容所送りになった中盤以降。
前半における伊与田中尉の言動や人間性自体が伏線となっていて、
それらが収束していく様はお見事という他ない

かつては軍務に誠実だったのが、マラリアの「シニ温度」によって死の淵をさまよい、
その後遺症から怠惰になってしまった中尉。
尾能が伊与田中尉への見方を変えたその事実が、この作品の根幹を成すモノだと言う構成は上手すぎる
このあたりは、ミステリーでデビューした作者の力量が生きた形になったといった所か。

登場人物の誰かに特に感情移入することはなく、
「真相」もあくまで尾能や衛生兵長の「推測」でしかなかったけど、
それでもその「推測」から察せられる中尉の心情にはやるせない気持ちになり、
同時に中尉とビルマ人たちの親密さのストーリーへの活かし方に感心しましたねえ。
中尉を知っていくにつれ、軽蔑していたはずの中尉に幻滅したくないと心情を変化させていく
尾能も良かった
よ。

と言うわけで、今回も外れることのない古処戦争小説でございました。

あなたの隣にいる孤独/樋口有介 - 2017.07.29 Sat

変換 ~ 105

樋口有介の最新作は、母の言う「あの人」から15年間逃げ続け、
戸籍もなく学校へも行かずに育った少女・玲奈(れな)が、
ある日母から「あの人」に見つかったとの連絡を受けたことから
母と離れ寄る辺なく街をさまよっていた所を、風変わりな自称小説家志望の青年・周東牧生と
その祖父で刑務所帰りの秋吉秋吉(あきよししゅうきち)の助けを借りながら真相に迫っていく。

「真相に迫っていく」って書いたけど、別に推理小説ってわけでもないのよねコレ
かと言って、作者お得意の青春系とも言い難いし。
その特異な事情から希薄な人間関係を送ってきた玲奈が、
初めて母以外の人間を頼りにして生活していく、と言う部分が大きい


玲奈・牧生・秋吉の人間関係と生活感は悪くはない。
のんびりした口調ですっとぼけた感じの牧生とがらっぱちでいて頭が切れる秋吉、
そして幼いながらもしっかり者で2人に対してはツッコミ役の玲奈。
この3人の軽妙なやりとりは作者の得意分野なので、読んでて楽しい
が、それがどうしたと言ってしまうとそれまで
ストーリーそのものがどうにもこちらの琴線に触れるものがなく、
その上玲奈が異常な境遇の割りにまっとうな性格と感性を持った女の子なので、
そのアンバランスさが感情移入を阻害するのよね。

そんなわけで、ハードカバーで購入したのは失敗したと感じる今日この頃。

「ラノベなんかバカでも書けるもの。
作者も読者もさ、自分で自分の人生を穢していることに自覚がないわけ。
俺はそういう風潮に一石を投じたいんだ」
ラノベなんかバカでも書ける、かどうかは知らないけど、
読者がそれでいいと思っているのなら、いいではないか。
周東がひとつや二つ石を投げたところで、どうせ誰にも当たらない。


この牧生のセリフに笑い、玲奈のツッコミに全力で同意。
純文だろうがラノベだろうがそこに本来貴賎はないはずで、
「読者がそれでいいと思っているのなら、いいではないか」はまったくもってその通り。
だから私のようなおっさんがラノベ買おうが少女漫画買おうが幼女向けアニメ観ようがいいのだ

「玲奈くん、それは、ダメだよ」
「なにが」
「この状況に一人で対処するのは、無理だよ」
「仕方ないことは仕方ないの」
「それでは可愛げがないよ」
「可愛くしても問題は解決しないもの」
「うん、そういう可愛げのないところが、可愛く見える。不思議な子だよなあ」

回帰 警視庁強行犯係・樋口顕/今野敏 - 2017.07.22 Sat

変換 ~ 102

樋口シリーズ最新作は、国際テロ組織との戦いと言う、これまでで1番スケールが大きくなっている。
にも関わらず、と言うかだからこそと言うか、シリーズ作品としてはイマイチ。

評価されれば嬉しいけど評価されすぎると重荷に感じ、
また評価されなきゃされないで落ち込む、でもいずれの時も感情を表に出さないことで、
冷静沈着と思われてうろたえる、面倒な男・樋口顕

その樋口の、いつもの必要以上に小市民的な内面描写が今回はやや薄く感じられて、
そこがこのシリーズの好きなところなだけに、そこがまずマイナス。

それから、家族の問題もこのシリーズの魅力のひとつであるにも関わらず、
今回はほとんどおまけ状態
娘の照美がバックパックで海外旅行を言い出す→氏家に相談→樋口が照美と話す→終わり。
ホントに会話がちょこっとだけで、氏家もいつも以上に出番が少ないし、この辺もだいぶマイナス。

が、警察小説としてはつまらなくはないから評価に困る
刑事にとっては「敵」に等しく、大抵の作品では刑事と対立する公安が、
本作では珍しく「刑事に協力的な公安」が登場する所が面白い。
テロリストを特定するための捜査やテロリストとの駆け引き、
そこに元刑事でテロ組織に入ったと噂される男・因幡が絡み、
状況の変化によって登場人物たちの立ち位置が変わっていく様も読み応え充分。

そんなわけで、樋口シリーズとしてはやや残念、警察小説としては面白い。
なんと言うか、風俗行って指名したら写真とは別物が出てきたけどサービスめっちゃ良かった的な感じと言うか、
ヴァンダレイ・シウバを期待してたら石井慧が出てきてでも意外と好勝負だったとかそんな感じ


うん、違うな

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